ニューヨークへ渡ってわずか1年で、3つのラーメン店舗を展開した日本人経営者の方がいらっしゃいます。
今回お話を伺った、ラーメン店麺屋二郎の代表取締役、安間二郎さんです。
ラーメン店麺屋二郎は、2016年夏までは日本国内のみで展開していました。しかし、同年10月にニューヨークで開催されたラーメンコンテストに出場し、見事優勝。その後、ニューヨークでのご縁や学びを存分に活かし、現地でそのビジネスを広げてこられました。
「積極的に行動することで、チャンスがつながってきた」という安間さん。ニューヨークでチャンスを掴みビジネスを展開していくための秘訣を、PRライターの伊藤聡志が伺いました。
本にもネットにもない「リアルな情報」が現地にはある
───2016年の段階では海外進出は検討中だったそうですが、ニューヨークへ進出する決断ができたのはなぜでしょうか?
安間二郎(以下、安間):ニューヨーク進出のきっかけは、現地のラーメンコンテストの主催者さんから連絡をいただいたことでした。
国内においても麺屋二郎が特別に有名というわけではなかったのですが、目にとめていただいてニューヨークのコンテストへの招待してくださったんです。すごくワクワクしたので、「出ます!」と口に出し、そのための準備をしました。
せっかくのチャンスだから、誠心誠意、これまでやってきた力を出し切ろうとコンテストに臨みました。その結果、なんと優勝することができたんです。実戦から学びつづけてきたからですかね。そのときのよろこびはこの先も忘れることはありません。
さらにうれしいことに、その翌年には、コンテストを通してのご縁と経験によって、
ポップアップストアの出店や正式店舗のグランドオープンをニューヨークで果たすことができました。2018年1月現在、第2、第3店舗も準備をしているところです。
ニューヨークにきてからたった1年ですが、ここまでビジネスを広げてこられたのは、目の前にある小さな1歩を踏み出し、チャンスに尻込みすることなく動いたから。そして何より現地でのいろいろなご縁のおかげだと思っています。
日ごろから「まず行動してみる」ということを大切にしているので、ニューヨーク進出への決断に迷いはありませんでした。コンテストでの優勝やご縁の後押しで「今が進出すべきチャンスだ!」と確信していましたから。
だから、海外でビジネス展開を考えている人には、「どんなことも必ず自分の成長にもつなげることができる」と、思い切って行動してみてほしいですね。行動しなかったときの後悔と、たとえ失敗しても、行動をおこしたときの後悔とではまったく違います。
何より「行動をおこした」という事実が自信になって、次に迷ったときの糧になりますから。
───実際にニューヨークにいって、次につながるチャンスやご縁のほかには、どんなものを得られましたか?
安間:この通り、うちのニューヨーク進出は、入念に計画を練ったものではなかったんですね。それよりも、まず行動に移したことで、本やネットでは得られない「生の声」や「現地の生きた情報」を手に入れることができました。
1番大きかったのは、出場したニューヨークのラーメンコンテストで、ラーメンに対する現地の人の反応をみれたことです。
わたしたちの予想以上に好評だったのですが、「このメニューをこう改良することで、もっと多くの方によろこんでいただけそうだ!」など、実際の感触をつかむことができました。実戦こそがなによりの学びなんです。
これまで、現地の方の反応をみて味の好みを把握して、メニューに反映するという地道な改善をつづけてきました。
そうすることで、カウンターのお客さまが「Amazing!」といってウインクしてくれたりするようになったんです。より多くの笑顔やポジティブな感想をいただけるようになり、ますますやりがいを感じています。そして、満足していただいたお客さまが友人に勧めてくれたりと、口コミでも来店客数がどんどん伸びていきました。
ニューヨークにはいろんな国からきたいろんな職種の人がいます。いろんな人たちと食や経営、現地の情報について会話することで、多様な観点から経営を学ぶことができる環境です。
わたしは、情報の価値は「ネットよりリアル」の方が高いと考えています。リサーチする以上に、実際にやってみて得られるものって、とても多いんですね。今回も、やはり、まず行動してみて本当によかったと思っています。
日本とニューヨーク、文化の違いはコミュニケーションで補おう
───行動してもカベにぶつかるときはどうすればよいのでしょうか。
安間:行動してみるとはいっても、自分1人ではできないことはたくさんありますよね。
そういうとき、できないことは、とことん周りの人に頼りましょう。わたしもそうしてきました。
たとえばマンハッタン1号店を始める際、わたしは英語をしゃべれないので通訳を頼んだり、法律や不動産などは専門家に依頼しました。また、コンテストの運営の方にコンサルを頼み込んだりと、人の力を借りることを意識しましたね。
現地での出会いがあって、いろんな方にラーメン店の運営を助けてもらってきたからこそ、今があります。
そして、そうやって人に助けていただくために、信頼しあえる関係の構築を意識しています。わたしは、「双方がありのままを受け入れ、価値を提供しあえる関係」にこそ意義があると思うんです。
だから、周りの人と接するとき、ありのままの自分でありながら「相手のために何ができるか」を考えるようにしています。
ニューヨークは個性が尊重される文化なので、素の付き合いをしやすいです。だから、身構えずに自分からオープンマインドになること。
そして、まずは自分から与えられるものがないかを探ること。そうすると、深い関係を築いていけるのではないでしょうか。
───ニューヨークと日本では文化がかなり異なると思いますが、運営において何か意識されていることはありますか?
安間:文化が違うからこそのリスクを把握することですね。
たとえば衛生管理の方法。ニューヨークは日本よりも食品の保管方法が厳しく、細かく定められていたりするので、誤解のないよう、正確な情報伝達が必要となります。
それから、日本の採用面接では、履歴書に顔写真や住所を載せるのは当たり前ですよね。でも、ニューヨークではどちらも使われないです。
面接で住所などを聞いたら訴えられるかもしれないというリスクさえあるんですよ。そういった細かい文化の違いが多いので、現地で実際に経営をされている方から教えていただくのがいちばんです。
そして、しっかりとコミュニケーションをとって意思疎通を図ることにも気を配っています。
とくに、お店のスタッフに対しては自然体かつ「平等」に接するようにしていますね。アメリカという国全体として、「平等」というコンセプトが尊重されているので、勤務内外であるスタッフを「贔屓している!」なんて言われてしまわないように心がけています。
もちろん、目上の人には敬語を使うなどの状況に応じた配慮はしていますが、大きく態度を変えたりしないように、誰に対しても、同じ「自分として」接しているんです。
ワクワクに従うだけでいい。ニューヨークでチャンスを掴むコツ
───ニューヨークでビジネスをしていく上で、ほかにはどのようなことを大切にされていますか?
安間:「何をどうすればよいか」という本質に焦点を絞り、チャレンジしつづけることです。
たとえば、わたしたちはニューヨークにくる以前から海外進出を検討してしました。そして、候補地の1つのベトナムに視察にいったんですね。でも、その結果「儲かりそうではあるけど、ここではない」という感触を持ったんです。
そこで諦めてしまうのは簡単です。だったら「どの国なら展開していけるか」「どうすれば自分たちにあった国が見つかるか」とアンテナを立てつづけていました。
偶然にもニューヨークへのご縁ができたわけですが、マンハッタン1号店を開く前も不安はありましたよ。「今自分がアメリカへいって、日本の店舗を仲間に完全に任せてしまって大丈夫か」と。
未知のことに挑戦するときって、言い訳はいくらでもでてきます。でも、できる理由を考えようと思い、不安感を破ってニューヨーク店をオープンさせました。「日本の店舗がいざというときには、ニューヨークからでも自分が24時間対応する!」と覚悟を決めたんです。
覚悟を決めて、目標の実現や課題解決に集中すれば、道は必ず開けます。
───最後に、「ニューヨークで起業したい、ビジネス進出したい」という方々へメッセージをお願いします!
安間:何か大きな決断をするとき、最終的に大事なのは、「自分がワクワクするかどうか」ではないでしょうか。自分が「楽しい!」と思えば、どこまでも頑張っていけるものです。
わたしの場合は、ニューヨークのお客さまにラーメンを提供してよろこんでもらえたら、どんなにうれしいだろうと、そのワクワクが機動力になりました。
ニューヨークにきてからも、ラーメンを食べるニューヨーカーを目の前に、「もっと美味しそうに食べる姿を見たい」という気持ちにさせてくれます。
だから極端に言えば「これがしたい!」という何かがあるなら、成功する自信とか根拠もなくてよくて、「やってみたい!」って気持ちだけで、ニューヨークへ行けばいいんです。むしろ、チャンスを掴み、成功していくためには、そんな前のめりな気持ちの方が重要だと、わたしは思います。
これまでをふり返ってみると、わたしはチャンスを掴んでここまで進んでこられたことが素直にすごくうれしいです。それだけでも充分、人生にとって価値のあることじゃないですか。
だから、海外にきて何かやりたいという人は、まず自分の心に素直になって、決断と行動をしてみてください。体験からリアルな情報を得てみてください。文化や環境が違うからこそ、次につながるようないろいろな発見が、必ずありますよ。
<インタビューを終えて>
今回取材を担当しました、PRライターの伊藤聡志です。
安間さんのお話を伺って、「実際にいってみれば、きっとなにかを得られる!」と納得させられました。
それは運命的なご縁であったり、次に活かせる「リアルな情報」であったり。どちらも行動せずには得られない、かつビジネス進出をするためにとても貴重なものですね!
だからこそ、「これからはもっと自分の心に素直になろう!」とも感じました。
みなさんも、目標実現や課題解決を望んでいるのなら、積極的に決断と行動をしてみてはいかがでしょうか。その経験はきっと次につながる貴重なものになると思います。
(取材・執筆:PRライター 伊藤聡志/編集:吉川実久)
<関連情報>
・麺屋二郎
0コメント